(2)導入事例の検討
機器操作のためのスイッチ適合時に適用した 27 事例 (2001 年 3 月〜2005 年 2 月の期間に行なった事例)
について再吟味を行ない, 表 6, 表 7, 表 8 のようにまとめた8). なお, 操作スイッチや入力デバイス等の入力装置と
操作対象となる出力装置は, 利用者の身体状況や利用環境等を検討した上で選定したが, 必要に応じてスイッチや操作機器の
製作改造を行ない, 目的の操作が実現できるように対応した.
表 6 利用者の疾患・障害名
障害・疾患 |
事例数 |
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脳性マヒ
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9 |
ALS
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9 |
ウェルドニッヒホフマン病
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2 |
脊髄小脳変性症
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2 |
頸髄損傷
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2 |
疾病や頭部外傷による後遺症
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2 |
脊髄空洞症 |
1 |
表 7 において, “異なる操作機器の切り替え操作”とは, 1 スイッチで 2 種類の機器を操作可能とすることを目的とし, 利用者本人の操作で適宜切り替え可能とするものである.
今回は“PC と呼出し装置の操作”,“PC と電話の操作”,“2 種類の呼び出し装置の操作”等の切り替え操作に適用した.
表 7 導入した目的の操作
目的の操作
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事例数 |
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意思伝達装置, VOCA の操作
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6 |
異なる操作機器の切り替え操作
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6 |
PC マウス, トラックボール等の操作
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4 |
在宅用呼出し装置の操作
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4 |
テレビ, AV 機器用リモコンの操作
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4 |
学習および就労用機器の操作 |
3 |
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表 8 に示す遅延回路は 2 つの意味を持つ. 遅延 (type1) とは, 利用者の操作における
不随意運動や微少な手指等の動きおよび利用環境の影響による誤操作を無視するための回路である.
遅延 (type2) は, フリップフロップ回路による出力切り替えを行なうための連続入力時間 (長押し時間) である.
そのため遅延時間の設定範囲は異なる.
今回の結果では遅延 (type1) は 0.2sec〜1.0sec, 遅延 (type2) は 1.0sec〜2.0sec であった.
また, “在宅用呼出し装置の操作”でのある適用事例では, 利用者本人からの呼び出しに気が付いた介護者等が,
リセットスイッチを押さない限り呼出し装置が鳴り続けるように外部リセット式ラッチ回路とした.
表 8 適用した入出力制御回路群
制御群 |
入力信号
制御回路部 |
出力信号
制御回路部 |
事例数 |
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1−1
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遅延 (type1) |
− |
9 |
2−1
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遅延 (type1) |
ラッチ
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2 |
2−2
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− |
ラッチ
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4 |
3−1
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遅延 (type1) |
ワンショット
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2 |
3−2
|
− |
ワンショット
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2 |
4−1 |
遅延 (type2) |
フリップフロップ |
8 |
(3)考察
今回の導入事例結果より, 表 8 に示すように 4 種類の制御群に分類することができた.
遅延回路を適用しなかった制御群は遅延時間 0secに設定した場合と同じ意味を持つ.
ワンショット回路においては, 今回立ち上がり時 (入力信号が OFF→ON 時) のみを適用したが,
利用者のスイッチ操作における身体状況によっては,立下り時 (入力信号が ON→OFF 時) の出力も考えられる.
さらにワンショット出力時間は, チャタリングを考慮した上で固定値 (0.4sec)
としたが, この時間を長くすることで一定時間出力させる制御群を用意することが可能となる. ラッチ回路においては
前述の呼出し装置の事例から,
利用者自身によるリセットだけでなく, 他者または他信号によるリセットが必要となる.
また, 今回適用した制御回路の他に, インターロック回路 (順次動作回路), カウンタ回路などの適用も考えられる.
これらが実利用場面において必要な制御回路であるか否かは, 今後の導入事例を蓄積していく中で検討する必要がある.
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