研究報告

実践的活動を通したアシスティブテクノロジー (支援技術)に関する
機器および要素技術の研究 研究代表者:渡辺 崇史
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図 7 試作したカウンタ付きスイッチ制御回路
図 7 試作したカウンタ付きスイッチ制御回路

図 8 適合した操作スイッチの取付け
図 8 適合した操作スイッチの取付け

(5)考察
 相談者一人に対する平均相談回数は, ほぼ 2 回となった (表 1・表 3 参照). この数値は継続中の相談も含まれているので, この回数内で相談が完了するというわけではないが, 逆に言うと 1 回で相談が終了するのではないことも示している. 実際の相談では相談初回も含めて少なくとも 1 回は詳細な内容の聞き取り, ニーズ把握, 用具適合に必要な要因の評価等の 時間に当てられ, 2 回目以降が具体的な用具の適合支援およびその試用評価等に当てられている. 特に次のような適合相談に 関しては, 数ヶ月単位の期間を必要とされる.

  • 直接利用者の身体に触れて利用されるもの (座位保持装置など)
  • 利用者自身が操作するもの (車いす, 操作スイッチ, 入力デバイス等)
  • 製作・改造対応が必要なもの

 これらは, 実際利用する生活場面で一定期間利用された後, 適用前後の生活の変化などを再評価をする必要があり, 継続的な支援やモニタリングが不可欠であるからである.
 また相談者は, 前に述べたように重複した障害を持っていることが多く, 認知面, 身体感覚等の他者からは見えにくい (理解されていない) 障害や, 利用者自身も気がついていない生活上の障害を持っていることがある. このことから, 顕在化している要望・要求または現在の状態等の限られた情報のみから, 短絡的に福祉用具や支援機器の利用につなげていくのではなく, さまざまな視点からケースワークを適宜行なわなければならない. 場合によっては, 人の部分的介助や社会資源の利用等を合わせて検討することはもちろん, 用具を使わない解決手段も考えておく融通性が必要である.

 

 したがって AT の適合相談では, 単に福祉用具や支援機器に詳しい者が行なうのではなく, 家族や関連する医療福祉職, 教員, ボランティア等の支援者がそれぞれの役割を持ち, 互いの協力と連携が求められる.

4. 操作スイッチ用インタフェースの導入事例と制御回路の検討
 操作スイッチ用インタフェースの構造
 本研究での操作スイッチ用インタフェースブロックを図 9 に, 試作したインタフェース回路外観を図 10 に示す. 利用者が操作するスイッチ等の入力デバイスからの信号は, 入力端子部にて受け付けるが, 利用者の不随意運動や何らかの外乱による影響等に対して確実な入力信号とするために, 入力信号制御回路部にて入力信号を制御する. そして, 利用したい機器は出力端子部に接続されるが, 適切かつ確実な利用機器の操作を行なうために, 出力信号制御回路を介して出力端子部より要求される信号を出力する. また, 利用者や外部に対して操作の状態と結果を知らせるために, 入出力それぞれにフィードバック出力部を持つ.

図 9 インタフェースブロック図
図 9 インタフェースブロック図


図 10 試作したインタフェース回路基板
図 10 試作したインタフェース回路基板

 

 

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Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University