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「心のおちつき部屋」 |
三重県立久居高等学校 二年 有爾 里苑 |
小学3年生だった私は、不登校児だった。些細な友人関係のトラブルから学校へ行くことを拒否した。担任の先生が家に迎えにくると、私は泣きじゃくって抵抗した。トイレに閉じこもったこともあった。走って逃げたこともあった。こんなに学校が嫌なのに。理解してくれない。
ある日、学校内にある「おちつき部屋」という所に連れて行かれた。そこにはカウンセラーの先生がいて、人見知りの激しい私はずっとうつむいていた。「好きなことある?」「…絵、描くこと」そんな単純なやり取りの後、紙とペンをくれた。それから、ずっと絵を描いていた。夕焼けが紙を照らして眩しかったのを覚えている。
唯一、学校で安心できた場所だった。恐怖そのものであった学校は、段々と、安心できる場所になっていった。わかってくれる人がここにいる。「いつでも来ていいよ」その言葉が励みになった。
それから3学期を迎え、学校に連れて行かれる度に泣いていたが、自発的に行けるようになった。悩んでいたことが嘘のように友人関係にも恵まれ、「おちつき部屋」に行く事もほとんどなくなった。中学へ進み、夢を意識し始めたとき、すぐに考えたのはカウンセラーだった。私もあの先生みたいになりたい。そう志しつつあった。ただ、恥ずかしいことに名前も覚えていなかった。それでも今の私があるのは先生のおかげだと、夢を叶える為に高校に進学した。高校でもカウンセラーの方がいることを知ったので、アドバイスをもらおうと思い、相談室へ寄った。そこで夢を志すキッカケを話した。すると聞いていた先生が、私の小学校を言い当てた。もしかして…困惑する中、母の職業も当てた。半信半疑が確信に変わった。あの先生だ!嬉しさに半泣きになっている私に「あの時はよくがんばったね」、笑顔でそう言ってくれた。先生に私が支えられたように、私も誰かを支えたい。運命みたいな再会を、また励みにさせてもらいます。 |
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不登校児だった小学3年生の時に通っていた「おちつき部屋」の先生と再会したドラマチックな体験。その感動が読者にも伝わってくる作品です。カウンセラーの先生との出会いが、自分の進路まで決めてしまう素晴らしい出会いであったことを、作者がきちんと感じて表現している点に好感を持ちました。不登校の時の情景描写や、不登校を克服して将来の夢を描くようになった現在までの長い過程がしっかり描かれていますから、作者に「良かったね」と素直な気持ちで声をかけたくなります。 |
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