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「ヘルパパ」 |
大阪府立東住吉高等学校 一年 吉原 星丸 |
僕の父は、3月からヘルパーの仕事を始めました。ヘルパーのパパなので、僕は密かに「ヘルパパ」と呼んでいます。
転職したのには、少しわけがあるようです。母に訊ねると、父の年齢では再就職が難しいこと、日本中どこへ行ってもできる仕事だということ、とくに高齢者の多い地方では父などまだ若いほうなのだ、ということでした。
でもそれだけではないようです。
「とぉちゃんはね、じっちゃんの介護をしてあげられなかったと言ってたでしょ」
その祖父は6年前に亡くなったのですが、脳梗塞で倒れたときから言葉が話せなくなり、僕は祖父の、アーアーウーウーという声しか聞いたことがありません。話もできない祖父。病院は完全看護だったので、
「何もしてあげられへんねん」
と、よく父が言っていたのを思い出します。
あぁそれで介護の道を選んだんやな…。
父に訊ねると、「そんな立派なことは考えていない。でもヘルパーになってよくわかった。介護は身内がしないほうがいい。身内はその人の元気なころをよく知っているから、オムツをしなければならないような姿を見ると、辛いにきまっている。そして介護される側もそんな姿は見せたくないにきまっている。だから、現在の姿を見てもなんとも感じない他人が介護をしてあげるほうが、みんなが前向きに生きてゆけると思う。」
へぇ、そうなんや。勉強になるわ、ヘルパパ。
「ところで、お前はとぉちゃんのオムツを替えてくれるんやろな。そのために赤ちゃんのときにオムツ替えてやったんやけど」
げっ! おいおいヘルパパ、勘弁してよぉ。父の太い脚に眼をやり、こりゃ腕力がいりそうだ…と思ってしまった僕。
う、やばいぞやばいぞ、一人息子! |
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ユーモアがあっておもしろい作品です。本来なら切実な問題である「介護」の話がユーモラスに描かれ、審査員全員一致の最優秀賞でした。文章にリズムもあって読みやすく、「う、やばいぞやばいぞ、一人息子!」のエンディングがとても効果的でした。少子化で一人息子が親の介護を考えなければいけない「現代」が透けて見える素晴らしい作品です。 |
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