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加配保育士とは?その役割ややりがい、必要な知識について徹底解説!

2025.07.16
「加配保育士」という言葉を聞いたことはありますか?
保育の現場で働いていても、「聞いたことはあるけれど、実際に何をする人なのかはよく知らない」「特別な資格が必要なのでは?」と感じている方も少なくありません。けれど今、保育の多様化が進む中で、加配保育士の存在がますます注目されています。
障がいや発達に特性のあるこども、医療的な配慮を必要とするこども、言葉がゆっくりなこどもなど、さまざまな“支援が必要なこども”が保育の場に通っています。そうしたこどもたちが、集団の中で安心して過ごし、少しずつでも自分らしい育ちを実現できるよう支える存在――それが「加配保育士」です。
保育士として働いていく中で、より一人ひとりに丁寧に関わりたいと感じたとき。支援の必要なこどもとの関係づくりにもっと力を注ぎたいと考えたとき。加配保育士という選択肢は、非常に魅力ある道となるはずです。
このコラムでは、「加配保育士とは何か」という基本的な理解から始め、実際の役割や仕事の流れ、やりがいや葛藤、求められる資質、そしてこの仕事の社会的な意義までを掘り下げてご紹介します。

加配保育士とは? ~その役割と必要性~

「加配保育士」の「加配」とは、行政用語で「加えて配置する」という意味があります。 通常、保育士は年齢と園児数に応じて配置人数が決まっていますが、障がいや特別な配慮が必要なこどもが在籍する場合には、個別に支援を行うための保育士が追加で配置されます。その保育士のことを、一般に「加配保育士」と呼んでいます。
この制度は、国や自治体が定める「障がい児保育加配制度」などに基づいており、対象となるこどもの人数や障がいの程度、医療的ケアの必要性などに応じて、保育所が加配職員を配置するための人件費の補助を受けることができます。つまり、制度として国が支える“公的な支援の仕組み”のひとつでもあるのです。 加配保育士が支援する子どもたちは、発達障がいや知的障がい、身体障がい、医療的ケアを要するこどもなど多様ですが、それだけではありません。
近年では、外国籍のこども、保護者との分離不安が強いこども、虐待リスクのあるこどもなど、多様な背景をもつこどもたちや、いわゆる“グレーゾーン”と呼ばれる発達がゆっくりな子どもへの支援に加配保育士が関わるケースも増えています。
求められているのは、「特別な子ども」に「特別なこと」をするのではなく、その子がクラスの中でできるだけ自分らしく、安心して過ごせるように環境を整え、関わりを丁寧に重ねるという保育の本質的な実践です。
インクルーシブ保育の考え方が社会に浸透する中で、「みんなと同じように」ではなく、「みんながそれぞれに安心していられるように」という保育のあり方が求められています。加配保育士は、まさにその中心的な存在なのです。

加配保育士の1日 ~現場での具体的な関わり~

加配保育士のある1日を例として見てみましょう。
この日の始まりは、こどもの登園から始まります。支援対象のこどもが園にやってくると、その日の表情や様子をよく観察し、安心して一日をスタートできるような声かけや環境調整を行います。登園時に不安が強く、なかなか離れられないこどもに対しては、保護者との橋渡しをしながら、徐々に園生活への切り替えを支えます。
朝の自由遊びや設定保育では、こどもが参加しやすいように配慮します。
音や刺激に敏感などの感覚優位があるこどもであれば、活動場所を工夫したり、本人が落ち着けるスペースを用意したりといった調整を行います。
言葉での指示が理解しにくいこどもに対しては、視覚的な支援や個別の説明を取り入れることもあります。
食事や排泄の場面では、自立を促しながらも無理のない範囲で支援を行います。たとえば、スプーンを持つ動作が不安定な子や発達性協調運動障害の特徴が見られる子には、最初は一緒に手を添えて始め、徐々に本人の力でできるようサポートを調整していきます。
排泄のタイミングをつかみにくい子に対しては、ルーティンを覚えてもらうために視覚カードを活用するなど、工夫は多岐にわたります。
午睡時には、そばで安心感を与えるように見守ったり、入眠しやすいよう背中を軽くトントンしたりすることもあります。一人ひとりに合わせた関わりが求められるからこそ、子どもの様子に寄り添う感覚や観察力がとても大切になります。
また、加配保育士は担任保育士と密に連携を取る存在でもあります。子どもの様子を記録し、クラス会議や職員間の打ち合わせで共有することで、全体の保育の質向上にもつながっています。時には保護者対応にも同席し、園と家庭の間をつなぐ“調整役”としての役割も果たしています。

やりがいと葛藤 ~加配保育士だからこそ見える景色~

加配保育士として働く中で最も大きなやりがいは、やはりこどもの成長を間近で感じられることにあります。最初は不安が強く、言葉も交わせなかった子が、少しずつ笑顔を見せ、やがて「せんせい、見て!」と自分の思いを伝えてくれるようになる。その変化のプロセスに関われることは、保育士にとって大きな喜びです。
日々の積み重ねの中で、信頼関係が築かれていく手応えを感じられるのは、加配保育士の特権とも言えるでしょう。保護者からの「先生がいてくれるから、うちの子は安心して通えています」という言葉や、担任からの「一緒にやってくれて助かっています」という感謝の気持ちが、日々のやりがいを支えます。
一方で、加配保育士という仕事は簡単なものではありません。子どもの状態が日によって大きく変化したり、どんな支援が適切なのか試行錯誤する日々が続いたりすることもあります。ときには、自分の関わりが子どもにとって本当に意味のあるものなのかと悩む瞬間もあるでしょう。
また、園全体の中で孤立感を抱えることも少なくありません。自分ひとりで悩みを抱え込んでしまうと、支援が苦しいものになってしまう可能性もあります。
そんなときにこそ大切なのは、周囲との連携と「一人で抱え込まない」姿勢です。担任、主任、園長、そして外部の支援機関や専門職とつながることで、支援の方向性を共有したり、アドバイスをもらったりすることができます。加配保育士は決して「一人で全部やる人」ではないという認識を持つことが、長く続ける上での鍵となります。

加配保育士になるには? 求められる姿勢とスキル

加配保育士として働くには、まず保育士資格が必要です。そのうえで、加配人員を必要としている園での採用や配置が行われます。正職員として採用される場合もあれば、非常勤や短時間勤務で働く加配保育士も増えています。働き方の柔軟さという点でも、多様なライフスタイルに合わせやすい職種でもあります。 特別な資格は必須とされていませんが、上記に述べた通り、多様な背景を持つこどもと関わる機会が多くなるため、障がい児保育や発達支援に関する知識を身につけておくとと現場での理解が深まり、よりよい支援ができるようになります。障がいについて理解する研修に参加したり、発達支援に関する講座を受講することで、スキルアップの機会を得ることも可能です。
何より大切なのは、子どもの“今”をまるごと受け止めるまなざしを持つことです。その子がどのような背景を抱え、何に困っていて、どう関われば安心できるのか――言葉にならないサインを読み取り、丁寧に応えていく姿勢が求められます。
また、支援には柔軟さも必要です。その日の調子や気分によって支援のあり方は変わることもあります。マニュアル通りにいかないからこそ、試行錯誤を重ねるプロセスそのものが、支援の質を高めていくのです。

子どもの成長を“支える”ということ

加配保育士の仕事を「支援」と表現することがありますが、それは一方的に何かを“してあげる”という意味ではありません。むしろ、「一緒に育ちに向き合う」という関係性の構築こそが支援の本質です。 発達に特性のあるこどもたちは、「できない」のではなく「まだ時間が必要」であったり「方法が合わない」だけかもしれません。加配保育士は、その子の可能性を信じ、「どうしたらできるようになるか」をともに考え、必要なサポートを整えていきます。
そして、加配保育士の存在は支援対象のこどもだけでなく、クラス全体の雰囲気や、保育士同士の関係性にも良い影響を与えます。「困っている友だちがいたら、先生たちはちゃんと見てくれている」「助けていいんだ」というメッセージが、こどもたちにも伝わっていくのです。
それはつまり、「多様なこどもたちが共に育つ場を実現すること」に直結します。インクルーシブ保育という考え方を、日々の実践として形にしているのが加配保育士なのです。

まとめ

加配保育士は、保育の現場において「誰ひとり取り残さない保育」を支える大切な存在です。こどもに深く寄り添い、その子らしい育ちを支援し、保護者に安心を届け、保育チームの中でつながりをつくる――そのすべてが、日々の丁寧な積み重ねによって実現されています。
「特別なこども」ではなく、「一人のこども」として向き合い、「特別な支援」ではなく、「その子に合った関わり方」を見つけていく。その実践の中には、保育士としての喜びややりがい、そして社会の未来を支える仕事としての大きな価値が詰まっています。
「もっと一人ひとりのこどもと向き合いたい」「支援を通して保育の幅を広げたい」と感じている方にとって、加配保育士という選択肢は、きっと新しい保育の扉を開いてくれるはずです。

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